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お知らせ

  • 2017年06月05日 古典に学ぶ 武士の情=有効な慈悲
  • 【武士の情=有効な慈悲】

    それは、サムライの慈悲が、種類上およそ他の慈悲とは違っているからではなくて、武士の情とは、慈悲が無分別な行動ではなく、正義にしかるべき配慮をいたすばあい、すなわち慈悲が単にある心の状態に留まるのではなくて、生殺与奪の力の裏付けをもっているばあいの慈悲を意味しているからである。私たちは武士の情を有効な慈悲と呼んでよかろう。

    (参考:佐藤全弘訳新渡戸稲造「武士道」):教文館

    【仁人は苦しみ困っている人を思いやる】

    サムライは、自分の荒々しい力とそれを利用する特権をもっていることを誇りとしていたけれども、孟子が愛の力について教えたところに、心から同意していた。孟子はいう、「仁の不仁に勝つはなお水の火に勝つがごとし、今の仁をなす者は、なお一杯の水をもって一車薪火を救うがごときなり」と。仁人はつねに苦しんで困っている人たちを思いやるのである。孟子は、倫理哲学を同情に基礎づけたアダム・スミスにはるかに先じて、それを主張していたのである。

    (参考:佐藤全弘訳新渡戸稲造「武士道」):教文館